山岸玲
首都圏で大規模水害が想定される際の広域避難について、国と東京都などでつくる検討会は17日、これまで約255万人としていた自治体が確保する施設への避難者を約74万人に絞り込んだ。今後、対象外となる住民に避難先の自主的な確保を促すほか、避難者の移動手段の確保などに向けた検討を進める。
2018年6月に始まった検討会のこれまでの議論では、首都圏を襲う過去最大規模の台風により、東京東部を流れる荒川と江戸川の氾濫(はんらん)や東京湾の高潮で、計17区の浸水を想定。約255万人が居住区外で自治体が確保する施設に避難する必要があるとしていた。
だが、19年の台風19号(東日本台風)では、接近直前になって広域避難を検討する予測雨量に到達したが、早い段階で鉄道の計画運休が発表され、膨大な避難者の移動手段が確保できなくなった。また、被害が多くの自治体にまたがる可能性があり、自治体外からの大規模な避難者を受け入れることが困難な状況に陥った。
こうした課題から、17日の検討会では、255万人すべてが自治体が準備する施設に広域避難するのは難しいと結論づけた。
検討会では、今後は住民自身が事前に確保した親族や知人宅、宿泊施設などに避難することを「強く推奨する」とした。検討会の試算では、自ら避難先を確保できる住民は約154万人、自治体が用意する高層階の避難先へ垂直避難する住民は約23万人。これに入院施設や福祉施設の計画に基づいて避難する約4万人をのぞき、広域避難するのは約74万人とした。
今後、自治体は74万人分の避難先や交通手段の確保を目標とする。住民が多い駅での混雑緩和や輸送力確保、道路の渋滞対策などについて、来年以降の出水期に向けて検討するという。
検討会の担当者は「自治体が避難先を確保することはもちろん、住民自身も居住地域にどういう災害リスクがあるかや、いざという時の避難先を平時から確認してほしい」と話した。(山岸玲)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル